地理情報システム学会

会長挨拶

会長就任にあたって 厳 網林(2022年5月14日)

このたびの理事会において理事の皆様からご推挙を賜り,地理情報システム学会の会長を拝命いたしました.新型コロ ナウイルスが始まって,あっという間に 2 年がたちました.学会運営も皆さんと対面しないまま,3 年目半ばに突入して います.1 日も早くノーマルに戻れるように願っています.一方,2 年前の G 空間 EXPO 学会シンポジウムで皆様が懸念 されたように,しばらくノーマルなんか考えずに,ウイルスと共存するニューノーマルになるしかないと言われましたね. あれが現実の中を,やりくりしてきました.幸い,最近,非常事態は解除され,感染者数も下がり続け,社会は一部活気 が戻りつつあるように見えます.

このような状況の中,私たちの学会もオンラインを使いながら,理事会,委員会,支部会,分科会の活動をつづけまし た.学術大会も 2 年続けて,規模縮小なく,企画セッション,学術発表,ポスターセッションをこなせました.これは大佛 前会長を始めとする前理事会の皆様,井上先生をはじめとする大会実行委員会の皆様,会員の皆様,事務局の皆様が一丸 となって,頑張ったおかげであります.この場を借りて心より御礼を申し上げます.

これからどうなるか,まだまだ油断できないと思いますが,2年も経験され,ワクチンも受けたので,身体的にもメンタ ル的にも免疫力がついたのではないかと思います.このままいけば,山場を超えたとし,学会活動がフルに再開できるよ う期待しています.会員の皆様,代議員の皆様,支部,分科会の皆様の一層のご協力をお願い申し上げます.

災害があるたびに,みんな「ピンチをチャンスに」といわれます.皮肉なことですが,コロナのおかげで,この間にデ ジタル化が加速され,オンラインやテレワークが日常になりました.都市において人流などの地理空間データは脚光を浴 びました.この波はこれからいよいよ地方にも及び,Society5.0 やデジタル田園都市国家戦略に一層コミットする と期待します.かつて 1990 年代に情報スーパーハイウェイが動き出し,デジタル化が空前のブームでした.当学会もそ の波に乗り,「空間の情報化」の先頭に立ちました.そのおかげで,学会が急成長し,地理情報社会の発展に大きく貢献で きました.そこで蓄積された地理情報コンテンツ,ノウハウ,知恵が今度は,全国津々浦々,生活の隅々に還元され,「情報 の空間化」に大活躍するのではないかと思います.そこに会員皆様の活躍が待っているに違いありません.一方,前の「空 間の情報化」は地理空間をデジタイジングすることで,いわゆる専業化の流れにあったと思います.そこに空間情報を専 門とする私たちにはアドバンテージがあったでしょう.対して,今度の「空間の情報化」は,地理情報専門だけでなく, 物理空間のさまざまな場面や課題に対する仮想空間と物理空間の統合化の事業であります.それを円滑に進めるためには さまざまな分野,セクターの方と協力しなければなりません.GIS にとってこれまでになかったチャレンジが待ち受けてい ます.幸いに本学会にはもともと多様な知識,分野,興味,関心の会員がおられます.また皆さんが都市から地方までの 各地の実問題に近い立場におられます.これらのことを考えれば,本学会にはこれまで以上に活躍するチャンスが巡って くるに違いありません.それを絶対逃さないように皆さんと一緒に頑張りたい所存でございます.

私自身はもともと中国の測量を専門とする大学,武漢測絵科技大学(現在武漢大学の一部)出身で,測量,地図一筋の 人間とも言えます.学生時代や助教の時に,国家基準の千分の1の地形図測量を基準点設置から製図までたくさん経験し ました.GIS を学んだのは 1986 年に日本に来てからのことでした.当時,“世の中に新しいものが現れてはまた去ってい く.GIS はどうなるでしょう”という見方もありました.あれから 30 年以上が経ち,いま GIS は DX(デジタルトランス フォーメーション)のインフラとして,また IoT(Internet of Thing)や IoE(Internet of Everything),CPS(Cyber-Physical System)や BIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling/Management)とも融合し, まだまだ新しい分野の最先端を走り続けています.このことをみれば,GIS を学び,GIS 学会のお世話になって,本当に よかったと思います.本学会には若い学会員もたくさんおられます.確かな先端技術の上に立ち,SDGs で代表されるさ まざまな社会課題の解決にも対応できる GIS を学んでおくことは,絶対に間違いありません.ぜひともクラスメート,同 僚,お友達を誘い,仲間になって,GISA の次の 30 年に向けて一緒に邁進しましょう.