地理情報システム学会 ワークショップ
『市民のための環境GIS』


【日時】2004年7月24日(土) 午後2:00より
【場所】名古屋大学環境総合館1Fレクチャーホール
【主催・共催】
   GIS学会中部地方事務局・同学校教育委員会
   名古屋地理学会
   名古屋大学環境学研究科地理学教室
   生涯学習のための災害・防災学習カリキュラム開発委員会

当日のプログラム

14:00〜 ワークショップのねらい
   岡本耕平(名古屋大学)
14:10〜14:40 荒川流域ネットワークにおける取り組みの紹介
   後藤真太郎(立正大学/特定非営利活動法人 荒川流域ネットワーク)
   川村ヒサオ(特定非営利活動法人 荒川流域ネットワーク)
−休憩−
14:50〜15:20 うおの会における取り組みの紹介
   中島経夫・甲斐朋子(うおの会/琵琶湖博物館)
   水野敏明(うおの会/WWF Japan)
15:20〜15:50 サルの会における取り組みの紹介
   戸田春華(サルの会・代表/名古屋大学・院)
−休憩−
16:00〜 討論「市民のための環境GISを考える」
   司会 大西宏治(富山大学)
   コメンテータ 古瀬勇一(ファルコン),谷 謙二(埼玉大学,MANDARA開発者)
17:00 閉会

ワークショップ概要

GISは,専門的利用に限ってみれば,ある程度の普及が進んでいる。しかし,一般市民のレベルで普及が進んでいるかと言えば必ずしもそうではない。今後,市民の間でGISを活用する意義はあるだろうか? あるとすればその活用促進のためにはどうすれば良いだろうか? このワークショップでは,実際にGISを活用している市民グループもしくはGIS活用を検討しているグループ,および,GIS開発者などにお集まり頂き,市民のための環境GISについて討論した。

■主旨説明■

まず,岡本耕平氏から本ワークショップ開催に至った経緯および主旨の説明がなされた。市民参加型GISの背景に地域づくりやまちづくりへの市民参加の流れがあり,それを踏まえたPPGIS(パブリックパーティシペーションGIS)の議論が欧米で盛んになっている。国内では,平成9年の改正河川法,平成15年の自然再生推進法など,環境に関わる法的整備が進む中で,住民の意見を反映すること,多様な主体の参加を促すことが明確に打ち出されている。こうした状況を踏まえて,本ワークショップ「市民のための環境GIS」の開催に至った。

■取り組み事例の紹介■

つぎに,三つの取り組み事例が紹介された。これらの事例紹介では,いずれもGIS導入にまつわる問題点が指摘された。荒川流域ネットワークからは,データ入手の問題,システム管理の問題,GIS教育の問題の3つが指摘された。とくにデータ入手の問題については,過去20年来,官民データ流通の状況が変わらないことが指摘され,自治体GISデータを流通させるには,たとえばNPOの活躍が有効であることが紹介された(熊谷市では,NPO法人GISパートナーシップが活躍)。うおの会からは,ベースマップ入手の困難さが指摘された。うおの会が要求する精度・スケールは,国土数値情報,数値地図2500のいずれも満足しない。また,座標系・測地系変換などアマチュアが対応するには難のある操作である。サルの会からは,情報弱者の問題(パソコン所有者でないとGISを利用できない),システムトラブルが市民に与える影響の問題(たった一度のトラブルが悪い印象を植え付ける),データ取得後の利活用に発展しない問題が紹介された。

■討論「市民のための環境GISを考える」■

最後に,会場にお集まりの方々すべてにご参加いただいて討論を行った。

まず,コメンテータの古瀬勇一氏より,コラボレーションの道具としてのGIS,目的用途にあったGISという指摘があった。ヒマラヤとハイキングで登山用具が違うようにGISにも用途にあったものがあるはず。近年は,ソフトウェアの方で,オープンソースが充実してきた。今後,行政からの提供を含めて,オープンコンテンツとでも言うべき地図データ提供が充実するはず。そうしたオープンコンテンツをどうマネージするかが課題で,市民や大学が参加しないと利用価値の高いコンテンツにならない。また,大縮尺の地図データ(市町村が持っているデータ)はなかなか出てこないので,大学などが窓口になって,市民のニーズとの橋渡しをしつつデータ提供を促す努力をする必要がある。
つぎに,コメンテータの谷謙二氏より,MANDARA開発時のコンセプトが紹介された。12年前,ArcInfo講習会を受講した折,MANDARA開発を思い立った。当時は,デジタル地図がないので,画像データからベクタに変換するプログラムが必要で,これを自作するに至った。その後,ウィンドウズへの対応,公開される地図コンテンツへの対応,平成の大合併による地図データ更新の必要性への対応,時間情報の必要性への対応,と現在のMANDARAに至った。地図へのマッチング,ジオリファレンスが難しい。
さらに,会場の方々を含めて討論を行った。主な題材として,どうやってGISに慣れていくか,どうやってデータを手に入れるか,といったことが議論された。GISを導入するにあたって,GISを使いこなすまでの過程にさまざまなものがあることがわかった。まずは,動機付けの問題が議論され,地図を使うメリットに気づくこと,大変な地図づくりが簡単にできるすごさを実感すること,GISに触れることが楽しいと思えること,などそれぞれ仕掛けに工夫が必要であることがわかった。つぎに,GIS教育の問題が議論され,マニュアルなどいくつかのアイデアがだされた。データ入手の問題については,市民がデータの所在を知らないこと,行政からのデータ提供の現実などについて議論された。議論の末,大学がポータル的な情報を持ち行政との橋渡しをすることなどが提案された。


なお,当日は,40名ほどの多数のご参加をいただきました。電子メールでのお知らせにとどまったにも関わらず,民間,自治体,大学のそれぞれの方々にお集まりいただきました。本ワークショップのテーマが広く注目されているものであることを改めて確認することができました。ご協力いただいたすべての皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

ワークショップ運営担当 名古屋大学地理学教室 奥貫圭一
地理情報システム学会中部地方事務局